<歯科での放射線>

 2011年の東日本大震災時に起きた、福島第一原発のメルトダウンは、まだ皆さんの記憶にあるかと思います。
 医療用レントゲンにおいても放射線被爆するのは事実ですが、その線量は十分に安全です。
 気になるかと思いますので、医療用放射線機器における線量についてまとめておきます (細かいデータは照射の機械によってバラつきがあります)

 歯科で最もよく撮影するデンタルレントゲン(口の中に小さなフィルムを入れて撮影)の場合、 1回の被爆線量は0.01mSv(ミリシーベルト)で、顎全体を撮影するパノラマレントゲンの1回の 被曝線量は0.04mSv前後です。
 胸部X線の1回撮影時の被爆線量は0.05mSvですので、歯科のパノラマレントゲンと比べると やや線量が多いことになります。

 人は地球上に存在しているだけでも自然に放射線を被爆していますが、その量は日本国内では 年間2.1mSvといわれています。
 ちなみにイランのラムサール市では年間の被爆線量が30mSvだそうです。
 したがってパノラマレントゲン(0.04mSv)を撮影しても、年間の自然被曝線量と比べてほとんど問題ない 程度と考えられます。実際には、防護エプロンを装着して撮影していますので、主要臓器に対する影響 は殆どないでしょう。

<一応、以下のような基準があります>

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○安心レベル 30mSv以下    悪い影響は起こらないので安心
△注意レベル 30〜500mSv以下 悪い影響が現れる可能性アリ
×危険レベル 500mSv以上    臨床的症状が現れる
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 なお、過去の原発事故のデータから5,000mSv以上の放射線の全身被爆で死の危険が迫ります。

<妊婦さんの胸部X線撮影による被爆はどうでしょうか>

 細かいデータの解説は産婦人科の先生にお譲りして、ざっくりとした数値だけまとめます。 ───────────────────────────────
  • 妊娠9日までの着床前期では50mSvを越えると流産の可能性
  • 妊娠2〜8週の器官形成期には100mSvを越えると奇形の発生
  • 8〜15週の胎児が120mSv以上の被曝を受けると精神発達遅滞
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 が生じる可能性があると考えられています。
 「胎児の被曝線量は2mSv以下」という基準がありますが、体内被曝の細かい計算をすっ飛ばしてざっくり見ても、 胸部X線の被爆線量は0.05mSvなので2mSvには到底及びません(つまり安全)。
 よって、妊婦さんの健診で胸部X線撮影や、歯科のデンタルレントゲン撮影や、パノラマレントゲン撮影は 安全と思われます。
 しかし、唯一の被爆国である日本においては放射線に対する不安がかなり有るため、あえてX線撮影は行わな いようにしているのが現状です。